誘電・絶縁システム研究室 研究紹介
本研究室では、有機エレクトロニクスを支える基盤技術として、絶縁信頼性の向上、界面制御技術、ナノ構造を活かした高性能絶縁材料の設計に注力しています。
特に、誘電特性の精密制御や高電圧環境下での長期耐久性評価を通じて、次世代高電圧機器や電子デバイスの実用化に貢献しています。
主な研究テーマ①:絶縁材料の劣化診断と寿命予測
産業機器(変圧器やモータ等)では、長期間にわたり絶縁性能を維持することが要求される一方で、環境や運転条件による材料の劣化や寿命予測が大きな課題となっています。
当研究室では、絶縁材料内部に発生する欠陥とその成長過程、部分放電特性の変化に注目し、放電発光の空間分布やタイミングの分析から寿命推定へとつなげる研究を行っています。
欠陥の形や位置によって部分放電の様子が異なるため、それらの同時観察により絶縁材料の劣化進行を可視化して、機器の長寿命化・高信頼化に貢献します。
これらの研究成果は実際の産業応用にも直結しており、いくつかの企業との共同研究も進行中です。
主な研究テーマ②:有機-無機ハイブリッド材料とセラミックスフィラーの複合化
本研究室のもう一つの大きな柱は、有機-無機複合材料(ハイブリッド)およびマイクロ・ナノセラミックスフィラーとの複合材料の設計・応用です。
これらは回路基板や回転機・発電機向け絶縁材料など、エレクトロニクスを支える基幹材料として重要であり、用途に応じて耐熱性・熱伝導性・撥水性などが求められます。
とくに、分子レベルで有機材料と無機成分を融合させた「有機・無機ハイブリッド」構造では、粒子をナノスケールまで微細化し、分子と紐づけた状態で複合化することにより、機能性が飛躍的に向上します。中でも、PDMS系ハイブリッド材料の構造制御と機能強化に力を入れており、硬化反応の最適化にも取り組んでいます。
さらに、これらのハイブリッドとセラミックス粒子との複合化、分散制御により、放熱性・撥水性・接着性を兼ね備えた材料への展開も行っています。電気泳動堆積法によるユニークな複合構造の形成も進めており、新たな成膜プロセスの確立を目指しています。
主な研究テーマ③:環境発電材料(水滴摩擦帯電型ナノ発電機)
水に関係した研究として、水滴摩擦帯電型ナノ発電機の開発も進めています。
金属-誘電体-金属構造の素子に水滴を滴下するだけで、瞬時に100V以上程度の電圧が発生する現象を応用し、自立型センサや環境発電デバイスとしての応用を目指しています。
この研究は、撥水性表面構造の設計や微細構造制御の研究とも連携して進められており、ナノスケールの材料設計からエネルギー変換効率の向上を目指す先端的テーマです。2022年4月から2025年3月までの期間,日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)による助成を受けて研究を進めてまいりました。関連する成果については こちらで紹介します。